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Column

英国産ビーフ&ラム
~ 英国・湖水地方 視察旅 vol.1 ~

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写真 ©AHDB

 2019年1月に日本への輸入が解禁となった英国産牛肉・羊肉。日本の食肉業界では、中国をはじめとする新興国との競合や各国・地域との経済連携協定の締結、コロナ禍を経た消費者の生活様式の変化など、食肉をめぐる情勢が日々変化するなか、新たな供給地を開拓する動きが活発化している。

 

 現在、日本市場にとってグラスフェッドビーフ(牧草肥育牛)と羊肉は、オーストラリアやニュージーランドといったオセアニアからの供給が大部分を占めている。そうしたなか、これら供給地からのリスクヘッジや産地の選択肢の拡大として注目されているのが欧州だ。とくに、英国はアンガスやヘレフォードなど世界的に有名な肉専用種の発祥地であることに加え、2019年1月の輸入解禁を機に、注目度が高まっている。

 

 今回、AHDB(農業・園芸開発委員会)の協力で日本のインポーターらと現地を視察し、そこで実際に見た英国の食肉生産やサプライチェーンについて紹介する。

放牧による高品質なグラスフェッドビーフを
自然と調和したサステナブルな生産体系で生産。

 近年、日本市場では健康志向の高まりなどによって、赤身肉への人気が高まっている。また、リテールやフードサービス業界のみならず、一般消費者においても「アンガス・ビーフ」への認知が定着しつつあるなか、英国はアンガスやヘレフォードなど人気の高い肉専用種の発祥地として知られる。さらに、英国産牛肉・羊肉の大きな特長として、自然放牧による「グラスフェッド(牧草肥育)」であることが挙げられる。英国は干ばつといった極端な気候変動がなく、年間を通じて温暖で降雨量も多いため、栄養価の高い良質な牧草地に恵まれている。このため、高品質なグラスフェッドビーフや羊肉が生産され、安定した供給量が確保できるという点も大きな魅力だ。

 

 もうひとつ、英国産牛肉・羊肉の優位性として「サステナビリティ」が挙げられる。欧州では、2020年5月に掲げた「Farm to Fork戦略」のなかで持続可能なフードシステムへの移行のための重要項目を示すなど、以前から重視する「環境配慮」や「持続性」といった価値を明確化し、推し進めている。

 

 日本でも消費者の「SDGs」への関心が高まるなか、畜産業では“環境に配慮した持続可能な畜産”の確立が求められるとともに、食品企業においても、サステナビリティを意識した事業・商品を展開していくことが不可欠となっている。こうした環境下、日本市場において、サステナブルな生産体系を実現する英国産牛肉・羊肉の可能性は今後よりいっそう大きくなるものとみられる。

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写真 ©AHDB

 今回訪れたイングランド北西部の湖水地方は、畜産業が盛んな地域として知られ、広大な牧草地が広がり、いたるところに牛や羊がのびのびと放牧されている景観が印象的だった。自然と調和した伝統的な畜産システムや、最新の技術を駆使した農場経営などについては、のちに紹介したい。

英国最大の食品保証スキーム「レッドトラクター認証」
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写真 ©AHDB

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写真 ©AHDB

英国最大の食品保証スキームである「RED TRACTOR(以下、レッドトラクター)認証」では、農場から販売に至るまで、食品製造のあらゆる面にわたって厳格な基準が定められている。「レッドトラクター認証」により保証された飲料食品は、厳格な品質基準に従って生産されるとともに、独立した検査機関によって定期的な検査が行われている。英国のみならずEU加盟国では、この「レッドトラクターマーク」が付いた飲料食品は、主要なスーパーなどにおいて食品の調達時に安全性を保証するものとして使用されている。

食肉においても、レッドトラクターの基準は飼料原料や養牛、養羊、輸送、と畜・加工、販売と農場から販売に至るサプライチェーン全体で適用され、動物福祉や食の安全性、トレーサビリティ、環境保護といった領域をカバーしている。

文・食品産業新聞社・畜産日報部 石田氏

英国・湖水地方 視察旅

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